モダンカート美術館

カートのドライビングを極めた者にとってプラスチック製のバケットシートは、
単なる座席ではなくカートの挙動をコントロールするための道具となる。
コーナリング中にアウト側に体重をかける事で、アウト側のタイヤは地面に
押し付けられ、イン側のタイヤよりも推進力を増す。時速80kmを超えると
言われる第1コーナーでかかる強大な力は、イン側のタイヤが地面から
浮くほどである。

コーナーに進入する直前にカートがブレーキングに要する時間はわずか
数秒である。全速力でストレートを駆け抜けたカートは、そのブレーキング
の力でリアタイヤが地面から浮き出す。カートのドライビングを極めた者は、
インリフトと呼ばれるこの現象をコーナリングに利用する。
イン側のリアタイヤが推進力を失う事により、カートはより大きく進行方向
を変える事が出来るのだ。

アクセル全開の最終コーナーを抜けて、下り坂のホームストレートへと
向かうドライバー達。左回りのコーナリング中にもかかわらず、ステア
リングを左に切っている事を感じさせない。ステアリングを通してフロント
タイヤに舵角を当てる事が、エンジンの加速への抵抗となる事を十分に
知っている者達が成し得るステアリングさばきは、あたかもコーナーを
直進しているかのようである。

RA:Cup第2戦60分耐久レース決勝中に、謎の機動戦士(スパ○コ製)
さんのマシンはフレームが折れてしまった。マシンには異常な挙動が
発生し、為す術なくピットインした。どうしていいか分からなかった・・・
交代した赤鬼Mさんは、そんなマシンで走った。パートナーにトロフィー
を渡すためだけに・・・
そしてRA:Cup第3戦、赤鬼Mさんから譲り受けたフレームで再び
カーナンバー22が走る!自分の走りでトロフィーをつかむために・・・

歴史が動く瞬間に立ち会える事は、誰しも幸福と感じるであろう・・・
なぜなら、その瞬間は多くの場合、気付かぬ内に過ぎ去ってしまうから
である。2005年6月5日、フォーミュランド・ラー飯能にいた人は皆、歴史
が動く瞬間を確実に意識していたはずである。およそ12年の間、FK−9
だけで争われていたレースでのFK−5の初優勝。
偉業を成し遂げ、チェッカーフラッグを掲げての栄光のウィニングランを
終えた虚弱病患者さんのマシンは、誇らしく見える。